男だって花が好き

残暑のあいまに涼しい風を感じるようになると、乾燥ハーブの保存作業が始まる。

初夏に収穫して、夏中涼しい窓辺につるしておいたハーブたちは、ちょうど今の時期になると、いいぐあいに乾燥してくる。リビングのテーブルの上に新聞紙を敷いて、ローズマリーの乾いた葉をていねいにはずしたり、ミントの葉を手でほぐして瓶詰めにしたりするのは、なかなか楽しい作業だ。今日はラベンダー・ポプリ作りに手をつけた。

高温多湿の日本では、デリケートなハーブの代表のように言われているラベンダーだが、わがベランダでは力強く生き残ってくれている。一番古株のイングリッシュラベンダー・ヒドコードは今年でもう8年めだ。毎年春の終わりごろになると美しい紫の花穂でベランダを華やかにしてくれる、なくてはならない存在だ。

ベランダ名物の強風も乾燥もラベンダーたちにとっては好都合のようだ。夏の日照りもなんとか持ちこたえてくれる。最初の３年目くらいまでは夏は日よけをしていたが、それも必要なかったようだ。猛暑と照り返しの真夏でも、水切れさえしなければ耐えてくれる。

初夏に花穂があがってきて紫色に染まり、ぽつぽつと開花が始まったら午前中に収穫し、和室の北側の窓辺に逆さにしてつるしておく。乾燥したらうっすら紫色が残っているつぼみを手で取りはずして空き瓶に詰めると、自家製ポプリの出来上がりだ。

本などでポプリの作り方を調べると、「仕上げにラベンダーのエッセンシャルオイルを数滴混ぜる」などと書いてあるが、じっさい作ってみると、その必要がまったくないことがわかる。びんのふたを開けて置いておくだけで、部屋中が強烈なラベンダーの香りに包まれるのだ。

作り終えると、指先にわずかなオイルがついているのを感じる。それはまさにラベンダー・オイルの香りで、ハーブ栽培の醍醐味を味わえる、至福のひとときである。

ベランダでは２０種類近く育てているが、ポプリ作りに一番適しているのは、”グロッソ”だと思う。香りが強いし、花穂が長くてたくさん収穫できるのだ。おまけに暑さにも強く、よく茂ってくれる。来年はもう一株増やす予定だ。

スイートマジョラムは、実力で勝負しているハーブだ。

苗の姿でやってきた３年前はそれほど目立たなかったが、スマートな姿に楚々としたお花を咲かせてさりげなくベランダに居座り、この夏はたくさん開花して、ベランダのハーブたちのなかでは収穫量トップの座にのし上がった。

つやつやの葉っぱにコロコロしたお花と姿もなかなか良いが、なんといっても香りが素晴らしい。

名前のとおりスイートだが、少しスパイシーだ。乾燥させた葉と花はスパイシー度が増して、台所で大活躍する。

スプラングルエッグにほんのひとつまみ入れるだけで、ぐっとおしゃれな味わいになるし、平凡なコンソメスープもたちまちスパイシー・スイートスープとなる。

カレーも洋風の炒め物も、これなしには考えられない。スパゲッティーもグラタンにも活用できそうな気がする。それくらい魅力的な香りで、料理用ハーブナンバーワンの地位を獲得しつつある、偉大なスイートマジョラム。

キッチンハーブとしての実力を評価してやりたい。「スイート＆スパイシー大賞」を進呈しよう。